植物採取に対する私の考え
あるホームページを見ていたら、植物採取に対する考えで議論がなされていました。また、別のページでは、植物の写真撮影は周辺の植物を踏み荒らすため、「盗掘」とほぼ同罪の「写屈」行為であり、禁止すべきであるという意見もありました。こうした議論をみると、植物採取や昆虫採取に「絶対反対」の立場の人と、採取禁止となっていない場所で、標本を作るための植物採取(写真撮影)は「禁止すべきでない」とする立場の人に意見が二分しているようです。
植物採取に対する私の考えは、後者の意見と同意見です。もちろん、国立公園などの採取不可となっている地域においては、いかなる植物の採取も禁止すべきであるし、採取可能な地域においても、カンランやエビネのような貴重種を単なる鑑賞や商売のために採取することには絶対反対です。この場合、とるのは写真だけにすべきです。しかし、少しくらい採取しても絶滅しない植物、例えば普通に見られる個体数の多い植物や帰化植物、山菜の類については、葉や花をちぎって、近縁種との違いを比較したり、花の構造を詳しく観察したり、たまには味わってみることは大切なことだと思います。将来にわたって多様な生態系を保全するためには、貴重な植物の採取を禁止することだけではダメで、貴重な植物が生育している環境全体を保全しなければなりません。植物に興味を持たない人が増えてくると、盗掘や植物採取などの行為は減っても、植物に配慮しない開発等により、生育環境そのものが破壊される危険性が増大します。したがって、植物採取のすべてに反対するのではなく、植物に触れながら、植物に対する思いやりの心をもつ人々を増やすための取組が重要であると考えています。こうした心を育てるためには、子供の頃の経験が重要であり、特に小中学生に対しては、理科の授業を通して野外観察を積極的に行う必要があると私は考えています。この私も、小さい頃から虫取り(特にセミ取り)が大好きだったし、高校時代には、私たち生徒の要望に応えて、生物の先生が、わざわざ校長先生の許可を得て、授業中によく野外観察に連れ出してくれたことが非常に良い経験となっています。
昆虫採取に対する考えも同じです。子供が興味本位で昆虫採取をしても、あるいは大人が趣味の範囲内で標本を作るために昆虫採取をしても、その昆虫が絶滅することはまずないと思います。私はセミやカブトムシなどについては子供の頃に採取や飼育を積極的に経験すべきであると考えています。そうすることにより、どんなことをすれば虫が死ぬのか、どうすれば虫にとって良い環境が保全されるのか等について、身をもって体験できるからです。子供向けの図鑑を見ても、どういう環境に虫がいるかについては比較的詳しく書いてありますが、どんな環境にさらし、どのような取扱いをすれば虫が死ぬのかなどについては書いてありません。
私がこのホームページを立ち上げているのも、自分と同じ趣味の人と意見交換をしたいということが大きな理由の一つですが、このホームページを通じて、少しでも多くの方が身近な植物の名前やその由来を知り、多様な自然を保全する思いやりの心を持つようになってほしいと願っているからです。
なお、保全すべき環境については、人の影響が入らない原生自然の保全も重要ですが、人為的に影響を与えている安定した環境、例えば水田やため池、定期的な山焼きを行っているところ、下刈りを行う里山等の保全も必要であると考えています。
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