<オルキス>
     ラン科は、植物の中ではキク科と並んで大きなグループを形成している一つで、単子葉類で最も進化したものと考えられ、形態的や生態的に見事に適応して、熱帯から寒帯まで世界に広く分布し、約800属、30000種を超えると言われています。日本では300種くらい自生していると言われています。
     花は一部の属を除いて左右相称で5弁の花弁からなり、唇弁(リップ)とよばれる目立つ花弁があり、その先端は距となっています。この唇弁は下方にありますが、本来は上にあるものが180°ねじれることによって、上下逆になっています。種子は極めて微細で、わずか数個〜数10個の細胞からなり、胚乳などはありません。発芽すると、一般にラン菌と呼ばれる菌類と共生して成長します。共生が進んだ種類では、葉緑体を失って腐生生活を営むようになります。
     ランは、英語でオーキッドと呼びますが、かつてはオルキスと呼ばれていました。オルキスとはギリシャ語で「睾丸」を意味し、新旧2個の対になる塊根を睾丸に見立てたといいます。
     ギリシャ神話では、オルキスは山羊の角を生やした女好きの半神半獣の精サテュロスがニンフに生ませた息子とされます。オルキスも女と酒が好きで、ディオニソス祭の日に酔って女祭司を犯したため、信者が八つ裂きにしてしまったそうです。父サテュロスは戻してくれるよう神々に頼みましたが同情してくれなかったが、八つ裂きは行き過ぎだったということになり、奇妙な形の花に変えられたとされます。オルキスは、今はハクサンチドリ属の属名となっています。