<オオシマザクラ>
     バラ科のサクラ(プルヌス)属は、日本にはヤマザクラやオオシマザクラなど15種が知られており、世界には温帯を中心に約200種が知られています。落葉又は常緑の高木(又は低木)で、冬芽は鱗片葉に包まれます。花は5数性で、萼片、花弁は5個です。果実は核果で、種子は普通1個、種子には胚乳がなく、大きな子葉に占められています。
     写真のオオシマザクラは伊豆諸島の特産とされ、房総半島や三浦半島にも野生状態で生えています。高さ15mくらいの落葉高木で、寿命は数100年はあり、伊豆大島には推定樹齢800年くらいの古木があります。全国に植えられているソメイヨシノの片親であり、花は葉の展開と同時に咲きます。花色は白で、ソメイヨシノより大きい感じがします。桜餅の葉は、主にこのオオシマザクラの葉が用いられ、桜餅の独特の香りは葉に含まれるクマリンという化学物質です。ちなみに、サクラが注目されるようになったのは平安時代に入ってからで、それ以前はウメが好まれました。
     サクラにまつわる伝説はいくつか残っているようですが、有名なのは桜児の伝説というのがあり、万葉集に歌われています。
     昔、あるところに櫻児という乙女が住んでいたそうです。二人の若者がこの娘に求婚しました。桜児がどちらにするか決めかねていると、若者二人は命をかけて決闘することになりました。それを知った桜児は悩み、桜の木の枝に帯をかけて死にました。二人の若者は悲しみに耐えきれず、次の2首の歌を詠んだとされます。
      春さらば 挿頭(かざし)にせむとわが思ひし 櫻の花は散りにけるかも
      妹(いも)が名に 懸けたる櫻花咲かば 常にや恋ひむいや年のはに